22.勇者ミクロ化する
どーも丑寅です。
30年後、みたび闘う時のため、全てを記し、備える記録です。
【前回までのあらすじ】
20代で克服した暗黒の森が、再び第50世代ウシトラを襲う。丑寅はこの森を脱出できるのか。ノンストップ・サーキット・ムービー。
武器なし丸腰、裸足のうしとらが10年後の自分に役立つ秘宝を手に入れるため今日も奔走する。
【巨大化した丑寅が萎んでいく】
1995年、これ以上ない程に巨大化したウシトラ(near70キロ)は、蟻を踏まないよう、ビルの隙間で泣き叫ぶ生き物と格闘していた。
美しく子育てするこの星のママたちは素晴らしい。
丑寅は、とにかく必死で、この小さき生き物と対峙し、書物を読み、今日と明日を生かそうとした。
この小さき生き物は、四六時中ミルクを、要求した。
なにせ2.5キロだったのである。
少し飲んでは小腹が空くらしく、小さく泣いた。毎日同じことを繰り返し、一日経った二日経ったと指折り数えていた。
しかし、この新しい星に漂着して半年くらい経った頃、ふと気づくと何日たったか数えなくなっていた。
そして、身体が心なしか軽くなった気がしたのである。恐る恐る体重計に乗ってみる。
体重は54キロになっていた。
オオオオオオーー
これは!中学ぶりのこんにちは。
55を切るとは!
ダイエットせずに痩せていく喜びにリミッターをいきなり外して、丑寅はガツガツ肉を食らった。ケーキを食らった。フライドチキンもピザも悪と呼ばれる世界の全てを腹に入れたのである。
そして、甘いものや脂肪を多く摂取すると、詰まりやすいと聞き、野菜も大量に食べた。
肉も魚もたくさん食べた。
生まれた生命の細胞を完璧にするために、甘いものや脂肪が多いものを控えていたウシトラは、その日を境に栄養素以外に好きなものも自由にバンバン食べることにしたのだ。
それでも丑寅は痩せていく。
どんどん痩せていく。
恐るべし子どもの吸い上げ力。何もかもが吸い取られてゆく。
そして、50キロになったとき、