5.勇者1984 初陣を切る
二十歳。
古きも新しきも全ての映画を観まくり、最果ての名画座まで足を運んだハタチ。
私が生まれ育った田舎には映画館がひとつしか無かった。
ロードショーがかかると、凄い豪華な組み合わせの2本立てであった。
昭和の田舎の高校生には、刺激的過ぎる組み合わせもあった。
『丑三つの村』古尾谷雅人主演の半ノンフィクションの重い映画に
『ええじゃないか』今村昌平監督のEROSコメディがくっついているという
とてつもなくお得なセットである。
もっともっとたくさんの映画が観たかった私は、オラ東京さいくだ、もっと映画を観まくるだ、と進学を機に東京へ。
心配性の親が入れた女子寮で、舎監の目をかいくぐり、毎晩のように名画座へ赴き、朝帰りを繰り返していた。
就職は映画会社に入りたかった。
が、なんの勉強もしていないというのに、バブルの時代と私の楽観主義が顔を出し、たった2社しか受けなかったのだ。
本を読むのも好きだから、という理由で受けた出版社1社。
大作を来年撮りますと明言していた映画会社。
どっちか受かるだろうとタカを括っていた恐るべき子供たちのひとり、それが私。
そして、初陣は、もちろん、惨敗するのである。
あったりまえだのクラッカー❗