15.勇者1974ひと夏の喪失
どうも丑寅です。
外は晴れでも心は嵐。迷子のうしとらです。
顔で笑って心で泣いて演歌まっしぐらウシトラのジェットコースター・ムービー。
【前回までのあらすじ】
丑寅は20代でクリアしたはずの暗黒の森に30年後またもや挑む無限ループに陥った。
果たしてここから脱出することはできるのか?
武器を捨て装備を最小限に挑んだクエスト『雪山の遭難者』は何とかクリア。
待ち受ける次なる難関は?!
【勇者は原因を探す】
勇者が暗黒の森に挑むことになったのは、何故なのか?丑寅は『かつての書』をめくる。
1974年夏。
勇者は小学校に通う普通のこどもだった。勇者の得意科目は国語と図工。
運動が苦手なせいで、本ばかり読んでいる頭でっかちな子供であり、内気で本好きにありがちな空想癖があり、誰よりも絵が上手いと信じこんだ小っ恥ずかしい子どもであった。
ある昼下がりの教室で、さして仲良しでもなく、普通の付き合いであるクラスメートのブコちゃんが話しかけてきた。
『この絵、なんていう題にしたらいいのかなあ』
(どれどれ)と絵の上手いウシトラちゃんは、お気楽にその絵を覗き込んだ。
その瞬間、頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。殴られたことはないからわからないが、周りの景色が一瞬モノクロになりグラリとするくらいの衝撃であったのだ。
うまい。。。
ブコちゃんは天才だ。。
その極彩色のちぎり絵はあまりに美しく、言葉を失ってしばらくは立ち直れなかった。
なのに、ブコちゃんは題名がわからないというのだ!
ブコちゃんは別に得意げでも自慢げでもなく、普通にただニコニコして、ちょっと困り顔なのである。
なんだ?!描きたいものが先にあったわけではないのか?これが天才というものなのか?
げぼーーーーーー
小学生の分際で、私は絵の道で食べることはできないと、早々に悟った。
なんとか気を取り直して平気を取り繕って言った。
『ぶこちゃん、これ、天に昇る水っていう題名はどーかな』
『わーウシトラちゃん、ありがとう♥
ピッタリだね、それにするよ』
私はショックながらも誇らしかった。
(採用してくれるなんて、ブコちゃんいいひとだー)
そして後日。
その絵はナンチャラ大臣賞みたいなものを取ったのだ。
そのとき、私の心に天啓のように降りてきた想い。
それは
『私は絵では敵わないから、文章で生きていこう』
私は画家は諦め、作家になることを決めた。
世の中のことわりをまるでわかってないこどもの戯言である。
丑寅、最初の喪失
1974年夏の出来事である。